大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和47(あ)2146 決定

主 文

本件各上告を棄却する

理 由

被告人A、同B、同C、同D、同Eの上告趣意(以下「被告人Aほか四名の上告

趣意」という。)第一及び被告人Fの上告趣意第一について

所論は、いずれも、違憲(二一条、一三条違反)をいう点もあるが、実質はすべ

て道路交通等保全に関する条例(昭和二四年八月二二日秋田県条例第二五号、以下

「本条例」という。)四条三項の解釈の誤りをいう単なる法令違反の主張にすぎず、

適法な上告理由にあたらない。なお、本条例四条三項による許可条件の付与は、現

に公衆に対する危害が切迫している場合に限らず、公衆に対する危害を予防するた

め、公衆に対する危害に発展する可能性のある行為を制限禁止する場合にも許され

るとした原判決の判断は、正当である。�

被告人Aほか四名の上告趣意第二冒頭の部分及び被告人Fの上告趣意第二冒頭の

部分について

所論のうち、各憲法三一条、九四条違反をいう点は、原判決は所論の点につき判

断を示しているから、所論は前提を欠き、その余は、単なる法令違反の主張であつ

て、適法な上告理由にあたらない。

被告人Aほか四名の上告趣意第二の1ないし4及び被告人Fの上告趣意第二の1

ないし4について

所論のうち、違憲をいう点は、原判決がなんら判断を示していない事項につき違

憲をいうものであるから不適法であり、その余は、単なる法令違反の主張であつて、

適法な上告理由にあたらない。

被告人A、同B、同C、同D、同Eの弁護人小山稔、同上野操の上告趣意(以下

「被告人Aほか四名の弁護人の上告趣意」という。)第一点及び被告人Fの弁護人

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小山稔・同上野操の上告趣意(以下「被告人Fの弁護人の上告趣意」という。)第

一点について

所論は、いずれも、本条例一条、四条一項の定める許可制は、これを実質的な届

出制と同視できず、集団行動を一般的に禁止するものであつて、憲法二一条に違反

すると主張する。

しかし、本条例は集団行動につき公安委員会の許可を要求している(一条)が、

公安委員会は集団行動の実施が「公共の安全を危険ならしめるような事態を惹起す

ることが明瞭であると認められる場合」のほかはこれを許可しなければならないと

され(三条)、許可が義務づけられ不許可の場合が厳格に制限されているのである

から、本条例の許可制は、その実質において届出制と異なるところがないのである

(最高裁昭和三五年(あ)第一一二号同年七月二〇日大法廷判決・刑集一四巻九号

一二四三頁参照)。所論は、前提を欠き、適法な上告理由にあたらない。

被告人Aほか四名の弁護人の上告趣意第二点及び被告人Fの弁護人の上告趣意第

二点について

所論は、本条例四条三項の「秩序を紊すことによつて生ずべき公衆に対する危害」

という要件は、集団行動を事前に規制する基準としては具体性、明確性を欠き、憲

法二一条、三一条に違反すると主張する。�

しかし、本条例四条三項は、公安委員会が条件を付しうる事項の範囲を定め、さ

らに本条例六条の委任により、道路交通等保全に関する条例の施行に関する規則(

昭和四四年四月一日秋田県公安委員会規則第三号)六条がその細目を定め、これに

基づいて公安委員会が具体的な許可条件を定めるのであつて、本条例四条三項に違

反する行為が直接に処罰や規制の対象となるのではない。そして、本条例四条三項

は、公安委員会に許可条件の付与を委任する要件を定めた規定としては、不明確で

あるとはいえない(最高裁昭和四〇年(あ)第一一八七号同四四年一二月二四日大

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法廷判決・刑集二三巻一二号一六二五頁、同昭和二八年(あ)第四八四一号同三五

年七月二〇日大法廷判決・刑集一四巻九号一一九七頁、同昭和二六年(あ)三一八

八号同二九年一一月二四日大法廷判決・刑集八巻一一号一八六六頁各参照)。所論

は、前提を欠き、適法な上告理由にあたらない。

被告人Aほか四名の弁護人の上告趣意第三点及び被告人Fの弁護人の上告趣意第

三点について

所論は、いずれも、本条例四条三項は道路交通法七七条三項と全く同一の趣旨、

目的をもつものであり、許可条件違反を処罰する本条例五条、道路交通法一一九条

一項一三号は保護法益及び違法態様を同じくするものであるのに、本条例五条の罪

の法定刑が道路交通法一一九条一項一三号より重いのは、憲法三一条、九四条、地

方自治法一四条に違反すると主張する。

しかし、道路交通法は道路交通秩序の維持を目的として制定された法律であり、

同法七七条三項による所轄警察署長の許可条件の付与もかかる目的のためにされる

ものであるのに対し、本条例は、単に道路交通秩序の維持にとどまらず、公共の安

全と秩序の維持を目的とするものと解され(本条例の目的が何かを判断するにあた

つては、本条例の前文の規定だけでなく、本条例全体の規定を統一的、有機的に解

釈して決定すべきである。)、本条例四条三項による公安委員会の許可条件の付与

は、示威行進又は示威運動の参加者が「秩序を紊し又は暴力行為をなすことによつ

て生ずべき公衆に対する危害を予防するため」付されるものであり、したがつて右

許可条件によつて禁止、制限される行為は、公衆に対する危害に発展する可能性が

ある行為に限られるのであるから、許可条件違反を処罰する本条例五条と道路交通

法一一九条一項一三号が保護法益及び違法態様を同じくするものとはいえない。所

論は、前提を欠き、適法な上告理由にあたらない。

被告人Aほか四名の弁護人の上告趣意第四点及び被告人Fの弁護人の上告趣意第

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四点のうち、各「ジグザグ行進、いわゆるフランス式デモなど一般公衆に対し迷惑

をおよばすような行為をしないこと」という条件が憲法二一条・三一条に違反する

と主張する点について�

所論は違憲をいうが、ジグザグ行進やいわゆるフランス式デモは、公衆との間に

まさつを生じ公衆に対する危害に発展する可能性があるから、本条例四条三項によ

り「公衆に対する危害を予防するため」これらの行為の制限、禁止が許されるもの

と解すべきである。所論は、前提を欠き、適法な上告理由にあたらない。

被告人Aほか四名の弁護人の上告趣意第四点及び被告人Fの弁護人の上告趣意第

四点のうち各その余の点について

所論のうち、憲法二一条、三一条違反をいう点は、被告人らの参加した本件各集

団行動に付された条件は、個々独立の意味を有し、個々に構成要件を補充するもの

であつて、被告人らは、自己の行為と法律上、事実上の関連のない許可条件につき

その違憲性を争う適格を欠くものであるから、不適法であり、その余は、単なる法

令違反の主張であつて適法な上告理由にあたらない。

よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号、一八一条一項但書により、裁判官

全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

昭和五〇年九月三〇日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 天 野 武 一

裁判官 関 根 小 郷

裁判官 江 里 口 清 雄

裁判官 高 辻 正 己

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